昨日の記事に追記を書きました.
Dialogue for global innovation 会議に参加しています.
ハーマン・ハウザー卿によるキーノートスピーチはいつも興味深いものです.彼はいつも最新の話題を研究し,大局から洞察を与えてくれるので,次のようなちょっとした小話も決して自慢話には聞こえないのです.
「そうですね,私も昔コンピュータを設計したことがあるんですよ.どんぐり(Acorn)コンピュータという名前だったんですがね,いまではARMと呼ばれています.皆さんのスマートフォンにも10個から12個ほど入っていますよ」
ハウザー卿に以前,Acornという名前はAppleよりも電話帳で前に出るために名付けたのかと不躾な質問をしたことがありました.彼は笑いながら「ええ,そういう気持ちもありました.でも心から願ったことは,どんぐり(acorn)のように小さな種から大きな木に育ってほしいと願ったからなんですよ」と答えてくれました.
今日も相変わらずお腹の調子が最悪で,休憩時間はほぼトイレに駆け込んでいたのですが,交流の時間を逃したぶん積極的に質問を繰り返しました.ケンブリッジ大学の研究者がクオータニオンとスピン行列のお話をされていたので,スピン行列はクオータニオンの再発明と思いますか? もしそうなら,どうしてパウリはクオータニオンの存在を無視したのでしょうか? と畳み掛けるように質問してみました.件の研究者はしばらく考えてから,パウリはひょっとしたらクオータニオンについて知っていたかもしれない,たぶんクオータニオンが物理学から消されたのはギブズのせいだろうと答えられました.この回答にはハウザー卿も笑って同意されていました.
このカンファレンスでは,運営チームメンバーとしてひとつだけわがままをお願いしました.それが「祈りの花瓶」のポスター発表をさせてもらうこと.本プロジェクトは長崎出身のデザイナー毎熊那々恵さんが中心となって進めている,核兵器の存在を忘れたいためのアートプロジェクトです.お陰様でカンファレンス参加者にたくさん想いを聞いていただくことができました.
夕方のレセプション・パーティでは,トリニティ・カレッジ・ダブリンのコモン・ルームという大変に格式の高いお部屋にご招待いただきました.僕たち日本チームを本当に歓迎してくれているのだなあと感激しました.ただお腹を壊した状態だったので,食事は見るだけで遠慮しました.
Keep reading with a 7-day free trial
Subscribe to 世界遺産科学者「いち」と行く『世界遺産の旅』 to keep reading this post and get 7 days of free access to the full post archives.